人間の視覚と機械の相似について
こんにちは。R&Dセクションに新人として配属されて初めての記事執筆になります。
今回のテーマは人間の視覚と機械の相似についてです。
人間の目と機械の目
弊社のブログ記事の大半は、製品や技術がテーマです。人間の視覚についての記事は、毛色が異なるように受け取られるかもしれません。
機械ではなく人間の目について話す理由は、機械の用いる技術が、実は人間の目と脳を模倣しているからです。
視覚の処理の始まりは、人間の周りを取り囲む環境に存在する光の粒子を、目が受け取ることによります。これは機械にとっても同様で、CCDなどのイメージセンサが光を受け取って電気信号に変換する過程が、処理の最初の段階です。人の目の光を受け取る部位(網膜)は、細胞の密集したところとまばらなところがあり、密集したところで受け取った視覚情報はより細かく認識できます。機械にとっての”網膜”は、イメージセンサーの画素という細かい部位にあたります。面積あたりに画素がたくさん配置されているほど精細な画像を得ることができる性質も、人間の目と同じです。
網膜やイメージセンサーの画素が光を受け取った段階の情報は、まだ意味を持たない明るさの大小と位置の羅列に過ぎません。人間の脳はここから様々な意味付けを行います。例えば、物と物の間に境界線を引き、知っている顔や文字の中からどれにあたるかを識別し、物体の見かけの色から環境光を差し引くことで「本来は物体が何色か」を判断します(我々が緑色のライトで照らされたりんごを見ても、それが黒ではなく赤だとわかるのはこのはたらきによります。詳しくは「色の恒常性」で調べてみてください)。機械にとっては、エッジ検出、パターン認識、色調補正がそれぞれと似た処理を行うものです。
大脳生理学の進歩への期待
人間の眼と機械の眼(センサと画像処理)がそれぞれの過程で似通っていることが、上記の説明で伝わっていたら幸いです。
人間の目と脳がどのように光の情報を処理しているのか、科学はその大筋を突き止めることに成功しましたが、まだすべてが詳らかになったわけではありません。見ることに関係する大脳生理学の進歩は、それ自体への成果だけでなく、機械の進化にも貢献するものと期待されます。
(文責:R&Dセクション 清野)