GTIN、JAN、ITF。その立ち位置と関連って説明できますか?(後編)
前回、GTIN、JAN、ITFの立ち位置というか相互の関連性が曖昧なまま、なんとなくそれぞれの単語を使用してしまっているケースが散見されるので、「巷に溢れるバーコードの中でも最もメジャーなJANとITFとはどんなバーコードなのか、そしてこれらのコードは国家標準なのか世界標準なのかといった立ち位置などを俯瞰してみよう」という趣旨でテーマ設定したと書きました。
で、JANとGTIN、世界標準についてまでを概観する辺りまでで紙幅を費やし過ぎたので、急遽前後編の二階建てにすると書きました。
後編はITFを中心に、JANやGTINとの関連を見ていこうと思います。
お復習い GS1の歴史
まずはお復習いを兼ねてですが、前編でJANやITFにはISO/IECとGS1という2つの国際標準化機関が関わっていると書きました。前者については前編でそれなりに説明しましたが、GS1については触れた程度で終わらせていましたので、もう少しだけ詳しく紹介しておきますね。
GS1を語るために、話は少し遡って、時は1973年。アメリカで世界初となる商品識別コードUPCが産声を上げ、翌年にはそのUPCシンボルを商品パッケージに貼付したチューインガムも登場、「スーパーでのチェックアウト時に製品情報を自動的に取得する精算方法」がスタートしました。UPCは、これに先立って普及を始めていたPLU(Price Look Up)システムを根幹としたPOSシステムとベストマッチなマリアージュとなり、この商品識別コードとバーコードシンボルを管理するUCC(Uniform Code Council)により管理運用されていきます。
そしてUPCに遅れること4年。1977年にヨーロッパ12ヵ国の流通業界とコード機関によって、EAN協会(European Article Number Association)が創設されます。翌年、日本のEAN協会加盟が認められ、その後も北米を除く世界各国がEANに加盟していきます。こうしてデファクト的に国際標準の地歩を固めるEANに対し、先行が故に取り残される形となったUPCとUCC。だけど国数シェアに圧倒的な差はあるものの、アメリカは圧倒的な市場性と経済力を誇り、貿易面などで実質2つの標準が併存する事態となります。なにかWindowsとMacを彷彿としてしまうのは、筆者だけでしょうか?(と言っても、パソコンとは異なり、説明は省きますがEANはUPCの上位互換性を保持しているので、関係性は随分違うんですが・・・)
そんなこんなの混乱を経て2002年11月、アメリカ(UCC)とカナダ(ECCC)の流通コード機関がEAN協会に加盟し、EAN協会は名実ともにグローバルな流通標準化機関になります。そして2005年1月に組織名がGS1に変更され、現在に至るというのがGS1の系譜です。
長いお復習いにお付き合いいただきました。さあ、ようやく後編の本題ITFとGTINのお話です。
商品識別コード GTIN-13 / GTIN-8 / GTIN-12 / GTIN-14
前編でも紹介しましたが、GTINはGS1標準の商品識別コードの総称であり、①GTIN-13(JANコード標準タイプ)、②GTIN-8(JANコード短縮タイプ)、③GTIN-12(北米地域で利用されるUPC)、④GTIN-14(集合包装用商品コード)の4種類と規定されています。
で、④GTIN-14(集合包装用商品コード)がITFに該当する識別コードとなります。ITFとJANの関係性はというと、GTIN-13(JANコード)が設定されている単品商品を複数個パッケージングした段ボールやケース、パレットなどの集合包装を識別するためのコードなんです。原則として単品商品のパッケージングですから、当然パッケージの中身である単品商品のGTIN-13(JANコード)をベースにコーディングするワケです。GTIN-13とGTIN-14、この数字はコードの桁数を表していて、JANコードは、ご存知の通り基本13桁(ややこしくなるので、短縮タイプの8桁は省きます)、このコードの頭(1桁目)に、パッケージ(集合包装)の入数や荷姿などを区別するための1桁の数字を付け足して14桁にしたものがGTIN-14という次第。付け足す1桁目の数字をインジータと言い、1~8の数字を使用します。付番ルールに厳密な取り決めはありません(実はGTIN-14には1~8以外の0と9が付番されたものもあるのですが、この2つの数字には明確な規定が存在します)が、入数の違う集合包装が存在する場合など、出荷数の多い順に「1」から付番していく等、実務上の原則は存在するので、お知りになりたい方はどうぞ検索してみてください。数多のサイトが紹介していますので、本稿では素通りさせていただきます。
<図1>
というのも今回のテーマ設定に当たって意識していたことなんですが、冒頭で述べたように「GTIN、JAN、ITFの立ち位置というか相互の関連性が曖昧なまま、なんとなくそれぞれの単語を使用」するケースに孕む誤解や勘違いの方にスポットを当てたいのです。
シンボルとコード
GTINやJANコードを商品識別コードと書いています。前編では「EANコードとEANシンボル」という表現も使用しました。この違いを意識せずに、曖昧にこれらの単語を使っているケースがあるように感じたからです。(混同した説明をしているサイトすらあったくらいです・・・)
例えばGTIN-13はJANコードのことですが、ではGTIN-14をITFコードというでしょうか。「えっ、そうでしょ?」と脳裏を過った方、いらっしゃいませんか?でも、答はNo!なんです。
GTIN-14は集合包装用商品コードで、この商品コードをバーコード表示するのにITFシンボルを使用しているというのが正解。商品コード自体は、ITFシンボルの下に記載された14桁の数値のことです。では「EANコードとEANシンボルは?」とこんがらがってきた方、上記の例の通りにバーコードを見直してみましょう。バーコードをEANシンボル、その下の13桁の数値がEANコードなんですね。コード名とシンボル名が同じだからこそ起こる現象なんですが、数あるバーコードの中で、最も目にするポピュラーなコードとシンボルであるが故に混同してしまうんです。
ところがITF自体はバーコードシンボルの一つですから、当然、他のコードを表現するバーコードとしても使用されたりします。ある年齢以上の方なら記憶に残っているかと思いますが、ビデオデッキでのテレビ番組録画予約に使用されていたバーコードって、実はITFシンボルだったんです。
GTIN-13とGTIN-14のシンボルが異なるのは何故?
ここまでお読みいただいた皆さんは、もうGTINとJAN、ITFの立ち位置と関係はお分かりいただけたと思います。
でも、最後に残った疑問ってありませんか?
そう、GTIN-13がJANコード表示の商品だとして、その商品をパッケージングした梱包を表すGTIN-14(集合包装用商品コード)を、何故ワザワザ別のバーコードシンボルで記載するのかって、不思議じゃありませんか?しかもJAN13桁の内、チェックデジット(CD)以外の数値は全く一緒なのに、です。
ここに「集合包装」用商品コードならではの理由があるんですねぇ。全てがそうだとは言いませんが、単品商品を集合包装したケースに使用されている多くが段ボール箱ではないでしょうか。段ボールは言うまでもなく、表面は滑らかな平面ではなくて少しデコボコしていますよね。そんな段ボールの表面に、本コラムバーコード篇第2回に紹介したようにJANシンボルのようなある程度印刷精度が要求されるマルチレベルのバーコードは不向きだということ、割とイメージできると思います。
そこで、ITFなんですね。この、太いバー(スペース)と細いバー(スペース)の2種類だけで表現されるバイナリーレベルのバーコードシンボルだからこそ、少々印刷精度が悪くても読み取り可能になるんですね。しかもITFにはバーコードをぐるりと囲む太い枠線が印刷されている場合も多いですよね。これはベアラーバーと言って、印刷の際にデコボコ表面でもしっかりと印刷されるようにする工夫だったりするんです。
<図2>
ここで、テーマからはそれますが、ちょっとおまけを。
先程、GTIN-13(JAN)の単品商品をパッケージングしてGTIN-14(集合包装用商品コード)化する際にインジケーター(1桁目)の付番に明確な規定はない、と書きました。ただ、この集合包装用商品コードはB to B、つまり企業間取引に使用するMOQ(最低発注数量)やSPQ(最小発注単位)、出荷におけるSNP(出荷梱包単位)などに密接に絡んでくるものなので、梱包容器(段ボールなど)への表示(印字)位置には細かい決まりがあるんです。物流シーンでよく目にするコンベアーラインでの自動読み取りに対応できるようにというニーズへの対応と言えます。しかも原則は立方体容器の4側面全て(どうしても難しい場合は長側面2面)への表示が要件とされているんですね。
詳しい設定は下記<図3>をご覧ください。
<図3>
まとめ
いかがでしたか?
途中、回りくどいとか感じられた方も少なからずいらっしゃったかもしれませんが、GTINとJAN、ITFの相関や国際標準との関わり等、朧気だったイメージが少し輪郭を持ったイメージに変わってきたのではないでしょうか。筆者自身のバーコードの「バ」の字も知らなかった昔の右往左往も踏まえて、少しでも分かり易くと悩みながら書いてみました。
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