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RFID:UHF帯RFIDリーダーライターとパッシブタグとの通信って?

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最終更新日:2021年05月07日
RFID:UHF帯RFIDリーダーライターとパッシブタグとの通信って?

「RFIDっていうのは、バーコードの電波版?」くらいのイメージの方々にも、もう少し具体的なイメージが掴めることを目指している自動認識コラムRFID篇の第3回。
前2回をお読みになった方は、電波を使用した無線通信でもって対象となるモノや人を識別する自動認識技術だということ、そして通信と言うからには電波に情報を載せてインタラクティブなやり取りをするシステムだということは、もうイメージ出来るようになられているかと思います。前回の「電波への情報の載せ方」に引き続いて、「電波に情報を載せる具体的な符号化方法」について触れようかとも考えなくもなかったのですが、少々技術的な話に偏りそうなのと、RFIDの符号化については既に色々なサイトで紹介もされているので、今回はもう少し概観的に、RFIDリーダーライターとRFタグの通信について、大雑把に理解する方向でテーマを設定しました。
RFIDリーダーライターが特定小電力局とか免許局といったように、無線局として扱われていることに違和感を感じている方や、「じゃあ、通信相手のRFタグも無線局なの?」とこんがらがってしまっている方も少なからずいらっしゃるようなので、RFIDにおける“通信”についてお話したいと思います。

UHF帯RFIDのパッシブタグとの通信は、バックスキャッター通信といいます


のっけからワケの分からない単語を出して申し訳ありませんが、NFC(HF帯)などの通信方式とは異なり、UHF帯RFIDのリーダーライターとRFタグ(パッシブタグ)との通信方式を、バックスキャッター(backscatter)通信といいます。日本語で言うと「後方散乱通信」と呼ばれる通信方式なんですが、よけいにややこしいかと勝手に気を回してカタカナ交じりの方の用語を使いました。
HF帯の通信方式は電磁誘導による磁界通信というものなのですが、こちらは日本語で書いても、具体的なことは分からないまでも、なんとなく分かったような感じがしますよね?(本項ではUHF帯の通信を紹介しますので、こちらについての紹介はしません)
ところが「後方散乱」という言葉は、おそらく日常で接する機会などは皆無に近いんじゃないでしょうか。しかも「後方」と「散乱」を、それぞれ日常使用する単語として語義を解釈すると、きっと余計に混乱するだろうと思われます。通信における専門用語として意味を持つ言葉だからです。
ということで、本項ではバックスキャッター通信で統一して紹介しますが、要するに「電波の反射を用いる通信方式」のことだと理解していただければ結構です。
リーダーライターを質問器(インテロゲーター)、RFタグを応答器(トランスポンダー)という呼び方をすることは、ご存知の方も多いと思いますが、要は質問器が応答器(RFタグのICチップ)の保持している情報を取得するために電波を発して問い合せ、その電波を受けた応答器が電波から電力を供給されると共に、この電波を反射する際に、電波(反射波)に情報を載せることで通信が成り立っているのです。
つまり電波を送出するのは質問器だけで、応答器は自ら電波を発することなく反射時に変調して送り返すだけです。冒頭でリーダーライターを無線局と呼ぶという意味のことを言いましたが、これがその答え。無線通信の意図を持って電波を送出するのですから、これはもう正真正銘の無線機であり、無線局なんですね。ところがRFタグの方は自分で電波を発出するわけではなく、単に反射するだけですから、当然無線局ではありませんし、免許も届出も必要がないのです。
ですから、リーダーライターは国内はもちろん海外でもそれぞれの国の電波法規に従う必要がありますし、送出される電波の周波数も、その国で認められた帯域でなければなりませんが、その電波を反射するRFタグの方は、世界共通に同じタグを使用できるということになります。だからこそ国際物流において、モノに貼付されたRFタグがデータキャリアになり得るという次第なんですね。

通信規格に定められているFM0とMSってどういう意味?


UHF帯のRFID運用を検討する際に高出力型(251mW~1W)のリーダーライターの導入を考えると、必ず免許局か登録局かの選択が伴います。「同じ出力なのに、何故、免許が必要になるリーダーと届出だけで済むリーダーに分かれるの?」という疑問を持った方も多いんじゃないでしょうか。
実はUHF帯の通信規格において、タグからリーダーライターへの通信における符号化方式として標準化(ISO/IEC 18000-63)されている方式は、ベースバンド(FM0)方式とミラーサブキャリア(MS)方式という2つがあるんですが、元々日本では、この内のベースバンド(FM0)方式しか認められていませんでした。RFIDの普及を見据えて、2008年春の電波法改正で日本でも使用可能になったのがMS方式です。
で、この方式によって、FM0方式の高出力リーダーは免許なし・届出でOKの登録局、MS方式の高出力リーダーは免許が必須の免許局と規定されているんです。※1
この2つの方式のどこが違うのかというと、リーダーからRFタグへの送信波とタグからの応答波が同じ周波数でやり取りされるのがFM0方式、タグからの反射波である応答波の周波数を送信波の周波数とはずらして通信する方式をMS(ミラーサブキャリア)方式といいます。



図 4-2 FM0 方式とミラーサブキャリア方式のスペクトル例
(情報通信審議会 情報通信技術分科会 移動通信システム委員会 報 告(案)より引用)


つまりFM0方式の場合、送信波と応答波が同一周波数を使用するということは、近接したエリア内において複数のリーダーで読み取りを行おうとすると、何も制限を加えなければ、同じ周波数の送信波が複数送出されることになり、反射波である微弱な応答波は消し飛んでしまって読み取りができなくなるという事態に陥ってしまいます。いわゆる電波干渉問題です。それを回避するためにFM0の場合、送信波を送出する前に必ず、微弱電波(RSSI:-74dBm以上)が飛んでいないかをリーダーが探索確認しなければならないと定められているのです。これをLBT(Listen Before Talk)と言い、リーダー(質問器)が質問を発する前に「RFタグ(応答器)が話(応答)していないか耳を澄まして聞きなさい」ということです。で、もし聞こえ(感知し)たら「話し終わるまでリーダーは話(発信)を始めてはいけませんよ」と。一般にキャリアセンス待ちといわれる待機時間は、これのことです。使用するリーダーの数が多ければ多いほどこの待機時間は長くなり、業務の効率性が損なわれるケースすら起こり得るのです。
でも、この通信のリアルタイム性を一定程度犠牲にすることによって、高出力の無線局であっても免許取得は免除されるというワケですね。
以下、ここからは余談的に読んでいただければ結構ですが、バックスキャッター通信という電波の反射による通信なのに、MS方式のように「反射波を送信波の周波数からずらして応答」なんてできるものだろうかと、不思議に思われた方のために、すこぶる大雑把にですが、補足しておきます。
日本では、この「反射波を送信波の周波数からずらす」という点においても、細かいレギュレーションがあって「送信波の隣接チャンネル(送信波を挟んで前後200kHz内)に周波数変位させる」とされています。で、EPC C1G2に準拠したRFタグには、アンテナの整合状態を切り替えるためのRFスイッチが搭載されていて、これを送信波からのコマンドにより、前述の200kHzずらした周波数(これをサブキャリア周波数といいます)に変位させることができる仕組みになっているのです。

※1 免許局について:UHF帯の出力1W(4Weirp)以内のRFIDリーダーライターについては免許局としての申請が必須となりますが、構内無線局として開設の場合は、使用する機器が「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」の「第2条第6号の2に規定する特定無線設備」として技適若しくは設計認証を取得していれば、免許申請を行うことにより交付されることが可能になります。しかし同様の機器であっても陸上移動局として開設する場合においては、第三級陸上特殊無線技士以上の有資格者出なければ開局申請も開局もできません。ご注意ください。

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