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RFID:電波で情報の送受信ができるのはなぜ?

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最終更新日:2021年04月13日
RFID:電波で情報の送受信ができるのはなぜ?

「普段、見たり聞いたりはするけど、RFIDっていったい何?」とか「仕事で使用しているけど、中身はブラックボックスと割り切ってます」といった方々にも、少なくともぼんやりとイメージが掴めることを目指している自動認識コラムのRFID篇。
初回はRFIDが無線周波数識別(radio frequency identification)といって、電波を使用した無線通信でもって対象となるモノや人を識別する自動認識技術で、この技術を利用したシステムは既に身の回りに溢れているといったことや、技術の生い立ちについて大雑把にまとめてみました。さて第2回は何をテーマにしようかと思案して、「RFタグにリーダーから電波を発して通信すると言うけど、そもそも電波で情報をやり取りするってどういうこと?」という声が結構あると耳にしたので、「これだ!」と藁にすがる思いも含めて、今回は「なぜデータ(情報)を電波で送れるのか」をテーマにしたいと思います。

そもそも電波って何?


まず「電波」という言葉から考えていきます。一般的に言うと電波とは電磁波の一種で、空間を伝わる電気エネルギーの波です。と言っても「その前に電磁波って何?」となりますよね。電磁波というのは「電界(電場)と磁界(磁場)が交互に発生しながら空間を伝わっていく電気エネルギーの波」と定義されます。で、電界は電気的な力(+とーが引き合う)が働く空間、磁界は磁気の力(N極とS極が引き合う)が働く空間で、この2つが交互に発生を繰り返しながら伝播する電気エネルギーと言えるでしょう。この電気エネルギーが繰り返す際に、いわゆる「波」の形をとるので、電磁「波」と呼ばれるんですね。
光(可視光線)や赤外線・紫外線、X線(レントゲン)、そして無線と呼ばれるテレビやラジオ、携帯電話やWi-Fiなど通信に使われている電波も全て電磁波です。それぞれ、なんとなく違ったもののように捉えている人も多いのではないでしょうか。これらの違いは、それぞれの電磁波が持つ固有の波の大きさの違いに起因するものなんです。この波の大きさのことを波長と言い、波の山のてっぺんから次のてっぺんまでの長さで表します。先ほど光(可視光線)も電磁波だと言いましたが、電磁波が伝播する速さは、波長に関わらず同じ速度なんですね。そう、俗にいう光速ということになります。なので1秒間に進む距離は、どんな波長の電磁波でも約30万km。この30万kmをそれぞれの波長で割ると、1秒間に何回波が繰り返されているのかが分かります。この1秒間に繰り返される波の数のことを周波数と呼んでいます。
冒頭で「電波とは電磁波の一種」と書きました。日本の電波法では、周波数が3THz以下(波長0.1mm以上)の電磁波を電波と定義しているんですね。ちなみに光(可視光線)は数百THzになるので、電波とは呼ばないというワケです。

身近にあるたくさんの種類の電波、RFIDはどんな電波なんでしょう。


前項で、日本の電波法では周波数が3THz以下の電磁波を電波と定義している、と書きました。例えばラジオは、主に526.5~1606.5 kHzと76~90 MHzの電波を使用していますし、地上波デジタル放送は470MHz~710MHz、BSデジタル放送はおおよそ11.7GHz~12.2GHzの周波数帯域の電波を使用して放送をしています。
で、このラジオやテレビの放送は、前述の周波数帯の電波に音声データや映像データを載せて自宅のラジオやテレビという受信機に情報(データ)を送り届けているんですね。
そしてRFIDはというと、本コラムの第1回で、日本では
1. 周波数135KHz以下をLF帯(Low Frequency:中波帯)
2. 13.56MHz を使用するHF(High Frequency:短波帯)
3. 920MHz帯で通信するUHF帯(Ultra High Frequency:極超短波帯)
4. 2.45GHz帯のマイクロ波帯(実際には300MHz - 3GHzの周波数の電波は総じてUHF)
以上の4つの帯域の使用が認められている、とご紹介しましたよね。実際には、RFIDとして主に上記の内の1~3の周波数の電波が使用されています。2005年に開催された愛・地球博のチケットには4の周波数帯のRFIDが使われていましたが、現在はほとんど使用されなくなってきています。
なので周波数135KHzの電波なら約2.2Kmの波長、13.56MHzなら約22m、920MHzなら約33cmの波長の電波を使って無線通信をしているとイメージしてください。

電波に情報を載せるためには、変調することが必要・・・変調と復調



無線や電波に心得のある方には説明も蛇足でしようが、馴染みのない方のために少しだけ脱線しておきます。今ではややマイナーなマスメディアになってしまった感のあるラジオをイメージしてください。AMラジオとかFMラジオといった言葉は、耳馴染みのある言葉ですよね。このAMとかFMというのが、電波をどう変調しているかを示しています。AMはAmplitude Modulationの略で振幅変調、同様にFMはFrequency Modulationで周波数変調をしていると言っているんです。
変調というのは、前述した周波数毎に持っている固有の波の形(波形)を意図的に変えてしまうことです。なぜ変える必要があるのかというと、電波は原則的には周波数が同じならば、その波形も同様なものになるからです。同じ形の波を、一定の状態のまま受信しても違いなんてありませんよね。だからこの波の基本波形を、あるルールを決めて、そのルールに従って変えてやることで、受け取る側は電波に込められた意図を理解出来るようになるというワケです。
因みに、何の変調も加えていない素のままの電波を搬送波と呼び、その波形は正弦波の形状を取ります。
正弦と言う言葉、筆者を含む多くのど文系の方々なら「聞いたことがあるような、ないような・・・」といったおぼろげにモヤがかかったイメージかも知れません。高校時代に悩まされた、あの三角関数で出てきた正弦余弦正接の正弦のことです。つまり正弦波というのは、その正弦曲線(sine curve)を描く波形なんです。
この「正弦曲線を描く搬送波を変調することで伝えたい意図(情報)を込める」と説明されても、イマイチピンとこない方は、ちょっと自分たちの会話をイメージしてください。会話は電波ではなく音波を利用しているのですが、もしこの会話が音叉を叩いたときのように一定の周波数の音波だけであれば、全く会話は成り立ちませんよね。私たちは自然に、この一定の空気振動を発声の際に口の形や音量を変えることで、伝えたい意図(情報)を込めているんです。そして音叉から発せられる「一定の周波数の音波」も、実は波の形は正弦波なんですね。
なんとなくでも「正弦波を意図的に変化させて情報を込める」というイメージは出来たでしょうか。
では、話を電波の変調に戻します。
この項の最初にAMラジオは振幅変調、FMラジオは周波数変調だと言いました。テレビは今からちょうど10年前の2011年に、放送方式が完全にデジタルに移行しましたが、ラジオは未だにアナログ放送のままです。このアナログでの変調方式が、主に振幅変調と周波数変調の2つになります。波の振れ幅や波長に手を加えることで、意図を正弦波に付加して電波を送り出しているんです。
そうすると電波を受ける側では、変調されて届いた電波から正弦波の成分を取り除いてやれば、付加された差分が理解出来るという寸法になるのです。これを復調と言います。
そしてRFIDではアナログではなくデジタル方式での変調を行います。デジタルの場合、アナログでの振幅変調、周波数変調に加えて、位相変調という方式が加わります。またデジタルでは、振幅変調や周波数変調などの変調を表す言い方も少し変わります。
アナログでの振幅変調に相当する変調をASK(Amplitude Shift Keying):振幅偏移変調、周波数変調をFSK(Frequency Shift Keying):周波数偏移変調、位相変調をPSK(Phase Shift Keying):位相偏移変調と言います。デジタルで変位量を付加するというのは、今述べた方式ごとに、そのルールに基づいて「0」と「1」で表現されたデジタル情報変調方式で変調するということです。

デジタルで電波に載せた情報で意思疎通(通信)するためのルール・・・符号化と復号


前の項で紹介した変調によって情報を付加する方法は、変調でした。ここで少々ややこしい話をしますが、実は変調というのは本来アナログ方式での呼び方です。電波に情報を載せる仕組みを分かりやすくするのに、変調の概念でデジタルでの情報加工も説明しましたが、デジタル方式では、もう少し細かいルールがあるんです。それを一般的に符号化と言います。詳しく説明するには紙幅も知識も筆者には足らないので、簡略に言わせてもらうと、ASKやFSKといった方法を変調方式、その変調の具体的な中身の加工方法が変調符号だとイメージして貰うと良いかと思います。
そして変調符号にもたくさんの種類があるのですが、取り敢えずここでは、そんな変調符号のルールに基づいて電波に乗せられた情報を解読している、といった理解でよろしいのではないでしょうか。この解読のことを、符号化(エンコード)に対して複号(デコード)と呼びます。

で、近年主流になりつつあるUHF帯のRFIDでは、リーダー → RFタグへの質問波とRFタグ→ リーダーへの応答波でそれぞれ方式の規格が標準化されていて、日本では電波法により、応答波の符号化としてベースバンド(FM0)方式とミラーサブキャリア方式の両符号化方式を基準として、無線局であるRFIDリーダーの出力や使用周波数チャンネル、免許の有無などが定められています。

めちゃ大雑把に、電波でどのように情報のやり取りをしているのかを述べてきました。分かりやすさを優先したので、誤解や語弊もあるかもしれませんが、おおよそのイメージは持っていただけたのではないでしょうか。
今後、まとめ的にお話した電波法と変調符号の関係や、RFIDの実運用で必要となる情報などを、改めて別項でご紹介していきたいと思います。不定期ではありますが、これからの連載もよろしくお願いします。

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